PRIIPs 2023に向けた準備
2021年12月1日
8分
EUまたは英国のリテールファンドを管理する投資会社にとって、現在の最優先事項は欧州委員会(EC)のPRIIPs規制ではないでしょうか。2018年に施行されたPRIIPs規制技術基準(RTS)は、ファンドマネージャーがパッケージ型リテール投資商品および保険ベース投資商品(PRIIPs)の重要情報文書(KID)を作成する際に従うべき規則を概説しています。2021年9月7日に採択されたECの改訂版RTSによると、UCITS(譲渡可能証券の集団投資事業)ファンドを扱うすべてのマネージャーは、2023年初頭までにUCITSの主要投資家情報文書(KIID)の提供からPRIIPs KIDの提供へ移行する必要があります。
この規制への対応は、企業にとって非常に複雑であるうえ、時間も限られています。
今月初め、当社は専門家会議に参加し、企業がPRIIPsへの対応準備をこの1年でどのように整えるべきか、徹底的に話し合いました。当社のFinancial Services部門チームリーダーであるTamara Vazquez Ruizは、Compliance Solutions StrategiesのChief Product OfficerであるRonan Brennan氏、Mason Hayes & Curran LLPのパートナーであるSara O’Reilly氏、Investment AssociationのFinancial Reporting部門Senior AdviserであるMark Sherwin氏と話し合う機会を得ました。いずれも、業界の動向に独自の意見を持つリーダーであり、マネージャーが今後1年間のうちに検討すべきヒントや問題点にも注意を促しています。
このイベントの要点は次のとおりです。
1年は長いようで短い
ECが、規制の施行を12か月間延期すると決定しました。このため、投資会社は、データ収集と報告に関する多数の要件に対応する時間が十分にあると思っているかもしれません。6か月間プラスされたことで、確かに余裕はできましたが、専門家として言わせてもらえば、明確で効率的な戦略プランがなければ、この12か月はあっという間に過ぎてしまいます。
たとえば、この規制では、開示すべき履歴データの最低期間が変更されています。過去2年間ではなく、最低でも過去10年間のデータを提供しなければなりません。この関連作業の複雑さと量は過小評価されがちですが、だからこそ見識のある企業なら一足早く着手すべきです。
国際的な取引がある場合に予測される困難
EU規則への準拠は、常にある程度の複雑さを覚悟しなければなりません。特に、EUの27か国に製品を展開している大企業など、関連する国のすべての言語でドキュメントを用意する必要がある場合はかなり複雑になります。EUと英国の規制の間に若干矛盾があることも、ファンドマネージャーにとっては対応が厄介になる要因です。
EUでは、新たな規制によってUCITS KIIDが実質的に終了します。しかし、英国ではそうでありません。英国と製品取引をしているEUの企業は、英国の顧客向けにUCITS KIIDを維持しながら、EUの顧客向けにPRIIPs KIDに移行しなければなりません。
このような複雑さが増す要因があるため、繰り返しますが、国際的な取引のある企業はドキュメントの準備を早急に開始する必要があるのです。
翻訳パートナーを早期から活用する
27か国が加盟し、24の公用語があるEUでは、翻訳はECの規制に準拠するための重要な要素となります。さらに、絶対的な正確さが求められる非常に機密性の高いコンテンツの翻訳には、高度な能力を備えた経験豊富な翻訳パートナーの活用が不可欠です。
UCITS KIIDからPRIIPs KIDへ移行すると、表現や用語に関するEU規則に従って大量のコンテンツを翻訳しなければなりません。数値や説明はローカライズする必要があります。間違いは許されません。すべてが100%正確でなければ、警告、罰金、評判の低下といったリスクに繋がりかねないのです。
精度とコンプライアンスを全社規模で確保するため、企業は可能な限り効率的な翻訳プロセスを導入する必要があります。UCITS KIIDを再利用すればPRIIPs KIDを簡単に作成できると誤った期待を抱いている企業もありますが、そうはいきません。両者の記述はかなり異なり、コピー&ペーストで済むものではないのです。
実績のある信頼できる翻訳パートナーと連携すれば、材料効率を高められます。たとえば、RWSでは、準備した翻訳メモリや用語集を活用して翻訳プロセスを迅速化できます。また、コンテンツ監査を実施して、企業に義務付けられたさまざまな開示の中の重複を特定できます。これにより、複数のコンテンツモジュールを同時に更新でき、時間の節約になります。さらに、機械主導と人間主導の翻訳ワークフローを組み合わせ、効率を高めながら品質を確保することもできます。当社の堅牢な機械翻訳エンジンは、金融サービス分野に関する広範な専門性を備えた、知識と経験の豊富な人間の作業をサポートします。
RWSにお任せください
PRIIPsへの移行準備は大変な作業になる可能性がありますが、単独で行う必要はありません。RWSは、あらゆる形式や言語でのファンド管理コンテンツの翻訳を専門としています。大手金融サービス企業と長年にわたり仕事をしてきた実績もあります。お客様がこれから直面する複雑な業務に向けて準備を整え実行できるよう、当社がサポートいたします。
UCITSからPRIIPs KIDへの移行のサポートについて詳しくは、当社のソリューション概要をご覧いただくか、当社チームへお問い合わせください。お客様固有のニーズについてもご相談いただけます。